灯をくべる。
ながらく、記すことをお休みしてしまっていた。
休んでしまっていた言い訳は、
聞く側が悲しくなるほど、やまほどある。
だけれど、
心がきゅっと痛くなる言い訳なんて、
できれば聞きたくはないし、
それをしないで済むように心がけたい、
と思う。
「〜があるから、〜できない」
「〜があったから、〜できなかった」
とよひかり珈琲店の店主にとって、
「お願いごとをすること」は、
とても勇気のいることである。
どんな理由であれ、
(一見、大したことでなくても)
勇気を振り絞ってお願いしてみたことが
受け入れてもらえず、
一人悲しくなってしまう、
そういう性分が昔も今も変われずにいる。
逆に、
受け入れてもらえた時でさえも、
喜んで引き受けてくれたのだろうか、
お願いしたからには
誠心誠意自分もしっかりしなくてはと、
疑心暗鬼と妙なプレッシャーに
勝手に襲われている時がある。
自分自身で決めたことを、
自分自身が行動して、形にしていく。
このとよひかり珈琲店の創業にあたって、
多くの方に
「よくここまで作り上げたね、
その行動力がすごい」と、
有難いことにお褒めの言葉を度々いただく。
正直な所、確かに苦労はあったが、
今の店主にとって
自分自身が決めたことを形にしていく事ほど、
精神的にラクなことはないと思っている、
だからからそうした。
ただ単純にそれだけのことなのである。
自分がすると決めたことが、
万が一達成することできなくても、
それは自分の責任であり、
他者を責める必要は全くない。
だから、精神的にラクなのである。
決して自身に対してストイックな訳ではなく、
そう捉えられがちな店主にとって、
「お願いごとをするということ」は、
一大事なことなのである。
しかし、
店主がどれだけそれが苦手であったとしても、
人は一人で生きていくことはできない。
誰しもが時として、
誰かを頼り、
誰かを助ける状況に遭遇する。
それが、
友であり、
家族であり、
地域である。
「困った時はお互いさま。」
いつだったかそんな言葉を言ってもらえて、
心の底から救われた日があるように、
身の回りにいる人たちの支えになりながら、
自身も少しずつ
人の肩を借りる勇気が持てたらなぁ、
と思うこの頃である。
そんな、
おとなしい中にも
何かしらこだわりを抱く店主がいる
とよひかり珈琲店は、
この文庫屋さんという場だけでなく、
いよいよ11月14日から
現実の世界で日々様々な物語を紡ぐ
ひとつの場として動きはじめたのである。
瞬く間にお店が動きはじめて1ヶ月が経ち、
店主はこのお店の主でありながら、
閃いたことがある。
実はこのお店に息をさせて、
動いてもらえるように、
店主はひとり珈琲生豆を焙煎し、
下ごしらえをし、
パンを焼き、
掃除をし、
宣伝活動をし、
お客さんを迎え、
注文を伺い、
珈琲や料理を提供している。
ふとした時、
その様はまるで
汗水を流しながら薪木か石炭を、
汽車にせっせとくべる機関士という
従業員のようであることに気がついた。
私はまだまだ、
店主にもおよばない店主。
私は今日から「とよひかり珈琲店の機関士」、
少しばかり笑える話である。
そんな機関士は、
今日も昔ながらのストーブに石油を補充し、
温かい火を灯しながら、
ほっと一息を求めるお客さんを
お迎えするのである。