とよひかり珈琲店の しるし。

『とよひかり珈琲店/14HIKARI COFFEE』

という屋号ができた頃から

営業が始まった現在まで、

常にお店の事に追われている店主。

これまで

一息つく間があっただろうかと

(きっとあっただろうけれど)、

心身共に余白の部分が少なかった、

そんな時期であったからこそ

「ロゴ」というお店の顔と言える大切なものと

向き合う時間を作る余裕もなく、

ひとまず「お店のイメージカラー」

「14という数字」

そして「COFFEE」というこの三点が

パッと目に入るデザインという事で、

今のアイコンにもなっている(仮)ロゴを

応急処置的に作成したのである。

 

とてもシンプルで、

店主もそれなりに気に入っていて

お客さんの中にも「このロゴいいですね!」と

褒めて下さる方もいて、嬉しさと感謝半分と

恥ずかしさ半分な気持ちであるのは、

今も変わらない。

 

一般的には、

お店のオープンに合わせてロゴを作成する

というのが、ビジネス戦略上「普通」なのかもしれない。

だけれど、

店主としては営業が始まっていない状態で

お店のイメージを決定してしまうことや、

ロゴに合わせて

お店の雰囲気を作り上げていく事に

あまり自信がなかったこともあり、

本格的なロゴ制作について

この3月まで躊躇していた。

 

このホームページと、

実店舗づくりが始まった

2016年4月から約2年、

プレオープンを2017年11月14日にしてから

約4ヶ月半

 

この月日を過ごす中で、

「どうしてここ宇検村なのか」

「なぜ珈琲なのか」

「どうして始める事になったのか」

など、今の自分がある「きっかけ」を

ひとつひとつ遡り、

それを元に少しずつ

「こういうお店にしていきたい」という、

気持ちが芽生えてきました。

 

そんな時にふと、

この想いとイメージをロゴに表したいと思った時に、

それをお願いするなら

「やっぱり、この人だ!」と、

そして、

自然とそれをするなら「今だ」と確信が持てたので、

ようやく2018年3月末に、

ロゴ制作に向けて動きはじめたのである。

 

実はその確信が持てるようになる前々から、

デザインをするのであれば「この人(達)」と

心の中で決めてはいて、

あとは自分自身の「覚悟」と「タイミング」。

お店の顔を託す事になるので、

デザイナーさんを信頼する事はもちろん、

依頼者として「このデザインを通じて

また新たに何かが生まれたり、

始まったりする『きっかけ』を繋げていきたい。」

そういう思いを忘れずに制作に関わる、

そういった覚悟が店主には必要だった。

 

**************

 

2016年3月はじめ、

とあるワークショップの開催を通じて、

デザイナーさんと店主は知り合うことになった。

その時、デザイナーさんは

ファシリテーターのアシスタントとして、

店主はワークショップの企画者として出会っており、

お互いに2年後にロゴのデザインを通じて仕事をするなんてことは

少しも想像していなかった。

しかし、この時があったからこそ、

今の「とよひかり珈琲店」があることは確かである。

 

ワークショップ開催翌日、

ファシリテーターさん(以下Nさん)、

アシスタントさん(以下Sさん)、

今回このお二人を招待した人(T姉)、

そして私の4人で昼食を村内の食堂で食べていた

そんな些細なひと時をこれからも忘れることはない。

 

食事中に

「あなたの本当にやりたいことは何ですか?」

Nさんから思いがけなく、

胸に刺さる質問をされた。

 

心のどこかで

自分の能力が不足していることに直面し、

どこか中途半端で、

関わってくれている人たちに申し訳ない思いがあり、

そう思いながらも、

本当は心からやってみたいと思うことを仕事にしたい」と、

自分勝手ではあるが、そう思っていたことを

見透かされたように感じた。

 

そして、次に私は「コーヒーがしたいんです」

と言ったように思う。

他にも色々とどうしてコーヒーなのか

細かく話したように思うが詳しくは覚えておらず、

そう私が言ったあとすぐにNさんは

「そしたら、コーヒーしたらいいじゃないですか、

次私が来る時にそれを見に来ます。」

基本的に豪快なNさんに私は断る勇気もなく、

即座に「わかりました!」

と答えることしかできなかった。

 

そして、NさんのとなりにいたSさんも

「そうですよ、コーヒーしたらいいんじゃないですか?

応援しますし、僕も来ます。」

その「コーヒーしたらいいじゃないですか」の一言、

たったこの一言で

背中をぐっと強く押してもらえたような気がして、

向かって行ける大きな目標ができたのは確かである。

 

 

店主がNさんを恐れている尊敬しているのは、

豪快さの中に言った事や約束した事は

必ず実行に移すべく動かれる方で、

実際にこの会話のあとすぐに、

次は5月に来る事やどういった段取りで

コーヒーを飲みに来るかまでが一瞬にして決まっていった。

だから私は「やるしかなかった」のである。

 

そんな今も変わらず

(むしろパワーアップしている)豪快なNさんと、

当時はその隣にいらっしゃった穏やかなSさん、

そのお二人が宇検村に来てくれたからこそ、

今こうして「とよひかり珈琲店」があるのは、

過言ではない。

 

*************

 

そして月日が経ち、Sさんは独立されて

ご夫婦でとあるプロジェクトをされるということになり、

そのあたりでようやく私は、

Sさんがデザインもされる方である事を知ったのである。

 

「人に人生あり。」である。

 

Sさんが再び宇検村を訪れたのは

その食堂での出来事から2ヶ月後のことで、

この時Sさんはあるものを引っさげて、

奥様とご一緒に訪れてくれた。

その時は、デザイナーであるSさんと

写真家である奥さんのMさんのお二人が主宰されている

「仮面夫婦プロジェクト」

というものについてお話しを伺った。

 

「仮面夫婦」と聞くと、

日本語としてはあまり良いイメージを抱かないかもしれない。

けれど、実際に人が本物の仮面を被ってみた時、

人は普段とは違う自分になれる。

少し気取ってみたり、

妖艶になれたり、

わんぱくになれたり・・・

でも、それは本来自分の中にあるもので、

丸裸の自分では出せずにいた部分なのかもしれない。

 

訪れてくれた時に、

お二人がひっさげていたもの、

それがそんな普段とは違う自分になれる

「仮面」である。

 

 

 

仮面ひとつで、新たな自分を知れる。

 

もちろん、SさんMさん夫妻は

広辞苑に書かれているであろう「仮面夫婦」ではなく

お互いを尊重し信頼し合い、

同志であり、

夫婦以上の絆で結ばれている素敵なご夫婦で、

まだまだ未熟な店主自身も

そういった部分も合わせて

お二人に憧れがあり、見習いたいと思っている。

 

*************

 

こういった経緯もあり、

心のどこかで

「いつかロゴのデザインをSさんにお願いしたい」と、

ひっそりと温めていたのである。

 

そして、2018年3月末に

仮面夫婦プロジェクトのお二人に会いに

鹿児島本土を訪れ、

ロゴデザインのお願いに伺ったのである。

 

鹿児島訪問後まもなく、

デザイン案をいくつか挙げてくださり、

とよひかり珈琲店が伝えたイメージと

クオリティーの高さに心が躍りつつも、

冷静にそれを見て、

修正や新たにアイディアも伝えさせていただいた。

そういった行程を何度も繰り返し、

ようやく「これだ」という形に

たどり着くことができたのである。

 

こだわりが強く、

突拍子もない考えを急に出し、

カーブの曲がり具合、文字間隔、

細部にまで口を出す依頼主である店主に対して、

仕事であるので当然なのかもしれないけれど、

Sさんは本当に快く全てを形にして表してくださった。

 

また店主にとっては、

デザイン面に関して初めての委託事業であったので、

そのノウハウを知らない店主にとってそれは、

「はじめてのおつかい」のような気分で、

正しい道を通ることも、

途中で道を変えることも、

想いや考えを伝えることも、

その過程ひとつひとつが童心に返ったような

そんな ドキドキ感であった。

 

*************

 

物質としての形がないもの、

ロゴマークやキャッチフレーズ・

建築といった視覚に響くデザイン一般、

人の心を救う言葉、

空間に価値を与える音楽、

コミュニティを動かす仕組みや考え方など、

世の中には簡単に貨幣価値に

換算できないスキルを生業としている方が多くいる。

 

だからこそ、

その恩恵をいただいた側としては、

その価値を貨幣価値で支払った以上に

魅力的なものに育てていくことが大切であり、

それが受け取った側としての役目

なのかもしれないと思う。

 

なので、

ロゴが完成してお披露目しておしまい。

ではなく、

お店のロゴに新たな命を宿していただいたと思って

ようやく出来たこの愛らしいロゴを、

ここを訪れる方にも愛されるよう

育んでいきたいと思うのである。

 

実は、このロゴは6月はじめには既に仕上がっており

すぐにお披露目することも出来たのに

そう出来なかったのは、

受け取った側としてこういった想いを

どうしても残しておきたくて、

どう言葉にしにしてそれを伝えようか、

真剣に考える時間が必要だったから。

 

ある人からすれば、

たかがロゴ、

たかが珈琲一杯、

たかが一言かもしれないけれど

それはある人にとっては

脳裏に焼きつくものであったり、

驚くほどに染みわたる一杯であったり、

時に救われ、

時に息が止まりそうになる一言であったりする。

 

「人に人生があるように、

形のあるものにも、形のないものにも、

知ろうという気持ちがあれば、

そこに物語が生まれ、

その価値は誰も計り知ることはできない、

その人にとっての、とっておきの価値になる。」

 

100円の缶コーヒーを買える自販機が、

お店にたどり着く前にいくつも佇んでいるにも関わらず、

目立った看板を立てていないがために

道に迷いながらも、

わざわざとよひかり珈琲店を目指して

訪れてくれるお客さんがいることは、

本当にありがたい。

 

だからこそわざわざ訪れてくれたお客さんが

どういった方なのか、

珈琲を飲んで帰ってもらうだけの関係ではなく、

差し支えなければ

お客さん自身がここに来てくれた事実に

価値を見出すお手伝いができたら・・・

と、そんな大層な事はできませんが、

お客さんの入り状況や雰囲気を察しながら

お声かけすることがあるかと思いますので、

「それも悪くないなぁ」というお気持ちで

お話しくださいましたら幸いです。

 

頭の中で言葉を考えて、

心の中で気持ちを確認して、

ようやく文字としてお伝えすることができました。

 

 この、かわくて愛おしいロゴと共に

これからのとよひかり珈琲店も

何卒よろしくお願いいたします。

店主

 

——- Special thanks. ——-

改めて、今回のロゴ制作に尽力してくださいました

仮面夫婦プロジェクトのSさんこと

漣 俊介さん(Mr. Shunsuke Sazanami)に、

この場をお借りして改めて感謝申し上げます。

ご製作いただいたロゴと共に、

とよひかり珈琲店を今より更に

人に寄り添えるお店にしていきたいなと思います。

 

*仮面夫婦プロジェクト*

仮面夫:Shunsuke Sazanami (漣 俊介)

 

—-about 仮面夫婦プロジェクト—–

facebook: 仮面夫婦プロジェクト

web:https://kamenfufuproject.com 

 

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